梅雨景色


 

                 

 

四十雀(しじゅうから)が梅雨を運んできたようにさえずっています

誰かにことづてするように

庭の紫陽花は雨にぬれて
咲いています

紫陽花はマリンブルーで

 とっておきのピアノ曲を蘇らせ

私をくすぐり物語を繋いでいきます

 

遠い人を思い出していると

カタツムリが

ぬれた紫陽花の葉にレールを引いていきました

ふとあの日の匂いが あの日の風が

のみ込んだあの日の思い出が集まります

 

雨にぬれた梅の実が

梅雨の指先で熟れていきます

色づいた梅の実がポトンと落ちて

私の残された時間を知らせています

 

梅雨に咲く紫陽花 熟れた梅の実

優しい時間を見ているはずなのに

今日は哀しく思われるのは

人との距離が遠くなっているからでしょうか

こみあげてくる細かい葉脈のような感傷は

七十数年の私につらなっていきます

 

人の足音を捜すような

はぐれてしまった時の寂しさを

紫陽花色に染まった梅雨景色を

写生するように

四十雀が鳴いています





                     

高安ミツ子