

信濃からマイクロバスで来るのです
信濃から従姉弟たちが来るのです
信濃から郷愁が運ばれてくるのです
突然の知らせに
私は夕立にあったように
心はずぶぬれ
喜びに包まれ
故郷のニセアカシアの香りを思い出していました
体調が悪い私を気遣って
近くのホテルに集まるのです
企画も運転も信濃からです
午前3時に信濃を出発した4家族7人
千葉に入り弟夫婦の家に到着してひと休憩
マイクロバスはさらに弟夫婦を乗せて
一路東金に着いたのです
何年ぶりに会うのだろうか
会うことは これが最後になるだろうが
忘れていたうきうき心が沸き上がってきます
皆微笑んでいるのです
懐かしさがこぼれ落ちて泣きたくなるのです
今味わえるこの喜びは
八十歳になる私へのご褒美だったのでしょうか
九十九里の焼き蛤を食べてホテルへ
九十九里の海は今日の出来事を寿ぐように波うっています
時は止まりません
けれどうれしいのです
辛さや嬉しさを背負い歩いてきた其々の人生を
皆 正論で人の心を測ろうとはしません
誰も声高に自分をひれかそうとはしないのです
只にこやかで優しくて温かいのです
それぞれが人生の終盤を向かい
一度会おうと企画した従姉弟たちと
思い出話や日常が飛び交うのです
子供の頃犀川でメダカすくいや 川の中ほどでカジカ釣り
はたまたつつじが山に咲くころ山で湧水を発見し
秘密の場所とした記憶が蘇ります
山つつじを持ち帰り従姉弟の庭に植えたが
根付いた記憶はないのです
遊びがいつも傍らにありました
夏になると
もぎたてのトウモロコシを茹でてくれた優しかったおばさん
トウモロコシは実っていない個所もあったが
遊んだ後は楽しくおいしく
時を忘れみんなで食べました
時は弾んで夏が終わる感じはしませんでした
故郷を離れた私と弟は
その後も帰る場所としていつも従姉弟たちがいました
呼び合う名前は昔のまま
「やこちゃん ひろちやん まりさん のうちゃん」
呼び合うたびに時代の喧騒は振り払われて
皆の微笑みが時間に溶けていくように思えるのです
郷愁は歳月を越えて
生き抜いてきたそれぞれの物語を集めて
焚火のようになってそれぞれの顔を照らして いたわるのです
刻まれた歳月の佇まいは
11人が刻んだそれぞれの人生を ほほえみという答えで焚火を囲んでいます
この情景を忘れまいと
私は心のシャターで何枚も何枚も撮っていきました
やさしくて温かいこの時間
郷愁は明日への歩みをもしめしています
残り少ない時間を飲み込んで
「お互いもう少し元気でいよう」
励ましあう言葉は 豊かな今日の時間を縁取り
九十九里の波は心地よく繰り返しています
信濃から来た従妹たちに
明朝 海の御来光が見えるようにと願いながら
九十九里の夜は更けていきました
今日の景色にさようならいうように
