高安ミツ子
スコールのような
淋しさに出会うとき
君の振り返る時間の中に
茜射す雑木林に続く小道に似た
母さん達の風景は見えるでしょうか
巡ってきた今年の夏
一本の向日葵が太く
天を描くように咲いている
ふと 君の時計が鳴りだして
跳び付いてきたあの頃の君の声が
向日葵の周りを回っています
皆で過ごした
一夏ごとの出来事が重なり
何でも不思議がった君の声が
向日葵の種のように カラカラと落ちてきました
不器用な母さんは
人生のぺタルを踏むことで
日常の曲がったパイプを
潜り抜けていたものでした
それでも
君を母さんの織物模様だと思った日から
君への喜びや後悔が
消えることなく続いています
父さんはカンカン帽を被りながら
少年のように
その都度実らせる葡萄の房を
口いっぱい頬張って
君の成長を待っていました
今君が巣立っていく喜びを感じながらも
ざらざらとした渇きの寂しさは
血脈の酔いそのものでしょうか
二十八年目のカレンダーの中で
君の幼い風景は今でも
炎天下の陽炎のように母さんは懐かしいのです
今年も母さんは
四季の花をめでながら
くる日も
自分と君の足音を追想するでしょう
日輪は高く
君の歩いて行く方向を知らせています
育ちゆく君の出発に
母さんは夏の手紙を書きました