過去へにも
未来にもつながらない時間を
私は手の中で転がしていた
時間は人の魂の色をして
冷たく透き通り
石榴の割れ目から覗いている
遠い母の記憶が薄れ始め
あるいは妙に鮮明になり
母の裾は
郷愁の潮騒になって私の嗚咽をけしている
気付いてみれば
私の裾に隠れていた二人の子供は
もうあんな遠くを歩いている
庭の隅で実をつけた幾つかの石榴に
母の記憶はないのだが
コトコトとこぼれる透き通った種が
つなぎ忘れた時間のようで
今の私の小さな孤独を感じている
狭い庭を歩くことで
私の記憶が薄れてゆく
薄れることに何の恐れもなくなる頃
三つの時間は
裾の先から重なってくるのだろうか
石榴の実の中に
遠い山の音が聞こえている