盂蘭盆会         高安ミツ子

                                                       
       
今年も盆棚を飾り 

先祖を迎えます

蜩(ひぐらし)が迷い込み 

夕暮れに鳴いています

哀しげな声に

先年逝った義兄が蘇ります



寡黙で心模様を語らなかった義兄が

幼いころ亡くした生母が

ずっと恋しかったと 

あのとき

病の床でその思いを語りました



哀切を帯びて鳴く蜩は義兄でしょうか

義父母と一緒にわが家にお入りください

わが家の窓は大きく開けてあります

好きだった盆団子も供えてあります



盆提灯に明かりがともるころ

庭には純白の夕顔が涼やかに揺れて

月明りに美しく映えています



子供や孫の声が今年の盆を彩り

盆棚に飾られたホオズキが

彼岸と此岸を赤く照らしています

今宵 義兄の心は癒えるでしょうか



今年の盆も

わが家の幾つもの記憶があふれだし

世代を超えて夏を饒舌に染めていきます



人が生きることには

何の変化もないけれど

年を重ねて迎える盆は

何故か風が集まってくるように思えるのです