都会の秋        高安ミツ子
                                                                     
   
  
                                 



時代に彩られた

駅の片隅のステイションライブ

雑踏を呑みこみ女の指先はアコーデイオンを奏で始めた

音色は空間を広げ

見知らぬ群衆を立ち止まらせていく

女の髪は揺れ眼は閉じられ

人のドラマを夢想するように奏でている

音色は私の心音の栓をかすかにゆるめていった時

都会に集まる

生と死の匂いが咲かせた一瞬の花のように

足下に咲く曼珠沙華が見えてきた

女の指先から哀愁おびた蝶が飛び立つと

血潮の炎をおびた曼珠沙華は

女の靴も服も赤く染め

かすかな笑みを浮かべる

女の唇に染みていった

この時私は都会の秋を感じていた