父母が亡くなり
伯父が
そして叔母が亡くなり
車窓に映る故郷への道は細くなるばかりです

故郷への思いは
秋の風が吹くたびに
私の心の深い吹き溜まりに
懐かしさと置き忘れたものが混じり合い
ハゼの葉が赤く色づくように蘇ります

車窓に映る信州の山々は
龍の小太郎伝説があるように
天に昇っていく山霧に
龍が隠れているように思えます
龍は尾をゆすり全山の木々を撫(な)で
カラマツを 桜を
もみじを 銀杏を
そして野草をも全ての物に息をかけて
秋色に染めています

赤く熟した柿は
山霧に巻かれるたびに甘さを増し
深まりゆく秋を私に知らせています

私の楯になってくれた人の声が
故郷では聞こえなくなり
山霧の向こう側に
消えてしまったかもしれないが
この空気とこの風と山並みは
あの時のままです

突然 車窓の秋の紅葉は
グラデーションをもった旋律のように
押し寄せてきて
何も語らなくてよいと
一気に私を飲み込んでいきました

この素早さはやはり龍が
生きる悲しさをぬぐってくれるのでしょうか
故郷の秋雨はしめやかです


(詩集 「今日の風」第4章 春夏秋冬より)




   Mitsuko's room       



 詩集「今日の風」を出版してから詩集に関しての
お手紙をいただきました。
発行してからの1か月は戴いたお手紙に返事を書く
時間に費やされた日々でした。
人の作品を読み心のこもったお手紙をお書きになることは
労力がいることで、なかなかできることではありません。
読んでいただくだけでもうれしいのですが、
いただいたお手紙を拝読するたびに感謝の気持ちが沸いて
まいりました。小さな世界ですが書き続けて
きたことに私なりの喜びを感じています。
この11月で76歳になります。体力の衰えを感じながらも
今まで通りの生活をゆっくり歩もうと思っています。

新型コロナの感染者の数が減りつつある現状です。、
このまま新しい年を迎えることができたらと願うのみです。
コロナ禍の影響でしょうか、登校拒否の子供たちが増えて
いることを聞きました。人の心までに巣食ってしまう
ウイルスに人はどんな知恵で人を救えるのでしょうか。
新型コロナの功罪の大きさはその症状だけで済まされない
深さを感じます。弱い子供たちの心まで壊してしまう
ことに胸の痛さを感じています。
一刻も早く子供たちに手を差し伸べてほしいと願うばかりです。


              

          

 



                             
高安ミツ子