静寂が似合う初雪が
ささやくように
紅梅や椿の蕾に
そしてヒヨドリに降りつもっています
白い風景は懐かしさを連れて
無言のまま
雪 雪 雪 私の上にも降りつもります
初雪は思い出をからめて
やさしく私を立ち止まらせてくれます
ふいと眼の奥に
私の記憶の雪だるまが
いくつも蘇ります
いくつもの季節を通り過ぎた私の感情が
さわさわと新雪に溶けはじめていきます
年齢を重ね密度をましたこの思いは
身軽さがない私の心を痛くするけれど
やってくる新しい春よ
首をかしげながら年相応に微笑んでいる私に
春への誘惑
あの雲雀のさえずりを聞かせてほしいのです
幼子に呪文をかけるように
初雪は静かに降り積もっています
みやると目鼻がついた雪だるまが
冬のよちよち門番のように
まあるい子供の声に包まれています
高安ミツ子